終わらない恋になれ
すると、婆さんはニヤリと笑ってからからかうような声色で話し出す。
「―――冷淡だと噂の殿下の雰囲気が幾分和らいだ、と噂が領内中に広まっておるゆえ様子を見に参ったが、なるほどその通り。…のう、殿下。呪いにかかってよかったろう?」
(………?)
話が見えなかった私が常陸に視線を移せば、ほんの少し頬を赤らめてそれでも婆さんをにらみつける常陸の姿。
しばらく目に見えない火花を飛ばしながら見つめ合う二人だったけど、先に折れたのは常陸のほう。
「…そのせいで執務のしわ寄せが来てはいるが」
「ヒヒッ!…では、ぬしらに幸多からんことを願ってやるとしようかの」
常陸の返事にそう満足そうに声を上げると、婆さんは一瞬で姿を消した。
………すると、しばらく静かだった見物人もそそくさと動き出す。
私と常陸は顔を見合わせて、小さく笑った。