終わらない恋になれ
「これは…?」
「―――この婆にもぬしらのように若い頃があってな、恋仲になった男もいたものよ。…殿下同様人間を伴侶とせねばならなかった、そう運命づけられ、その相手とも心を通じ合えたが」
ならなかったのだ、と。
そう言って、私へと差し出した小さな箱を見つめながら婆さんは話し出した。
「…奇遇にもその相手もぬしと同じ国の生まれでな。しかし、貴族の嫡男として生まれたゆえ人の世を捨てられぬ、と。………それからしばらくして、戦乱に巻き込まれあっけなく死んでしまった」
そこではっとした。
だからさっきあんなことを言って――…
「これはな、この魔界においても発見困難な魔力を帯びた水晶。…いくら契りを交わしても身体は人間に代わりがない。若狭のようなこともないとも限らぬ。殿下に渡し、魔力を込めてもらうがよい」