終わらない恋になれ
知らないんだ。
この美しいヴァンパイアは、愛を知らない。
そう思ったら涙がいっそう集まってくる。
恋愛感情だけじゃなく家族愛や、友達への親愛。
どれも知らないままここにいる、………かわいそうな、ヴァンパイア。
身体の力を抜いた私から、ゆっくりと常陸は遠ざかっていく。
いつの間にか涙のたまった目を開いて私はぼんやりと常陸を見ていた。
「…今までに誰か、アンタを愛してくれた人はいなかったの?」
次の瞬間、常陸は弾かれたように私の横を走り去る。
数拍後に聞こえたのは、玄関のドアが開く音だけだった。