午前0時、夜空の下で
音がより大きく聞こえ、この下だと確信する。

目の前には、冷たいコンクリートに挟まれた暗い階段が、闇へと続いていた。

しばし躊躇ったものの、心は意を決して地下を目指して下り始める。

彼女は気づいていなかった。

外で雷が鳴り響いているにもかかわらず、屋敷内には外部の音がまったく届かない不自然さに。

地下からの微かな水音が、洋館の外にいた心の耳に届いたという不自然さに。

そして……暗い洋館を、窓すらない地下への階段を、明かりも持たずに歩けたという――不自然さに。

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