午前0時、夜空の下で
逃げようと必死だったので、ずいぶん奥まで歩いたはずである。

「あの森はね、中心部が天界の直轄区や。その周辺は離区。つまり天界と魔界、双方の不干渉地帯。……アンタは離区に倒れとったよ。離区には特に危険な獣もいないし、アタシらもよく入っとるから、行き倒れかと思って拾うてん。やけど、治癒力を持つ雨が降るんは、天界の直轄区である中心部だけや。一歩足を踏み入れると、二度と出られなくなるっち聞いてたんやけど……」

首を傾げるミスティアを眺めつつ、心は自らの幸運に感謝していた。

牢獄に閉じ込められた時といい、森に入った時といい……絶体絶命の危機をなんだかんだで切り抜けている気がするのは、気の所為だろうか。

しばらく二人で黙り込んでいたが、やがてミスティアは小さく溜息をついた。

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