午前0時、夜空の下で
地下には特に変わった様子はなかった。

以前来た日と何ら変わらず、物置きとして使われているらしく、物が乱雑に置かれている。

空気は湿気を含んでいるが、滴るほどの水気は感じられない。

――ピチョン

そんな考えを嘲笑うかのように、音が、一際大きく心の耳に響いた。

とっさに目を走らせ、ふと気づく。

地下室のさらに奥にある、古い扉。

過去、佐伯は開けようとしたが開かないので放っておいたと言い、心を地下から出るように促した。

あの頃は、扉の存在が何だか恐くて、特に逆らうこともなく外に出てしまっていたのだ。

今でも扉を目にすると、なぜか胸騒ぎがする。

心は恐る恐る扉に近づくと、ゆっくりと手を伸ばした。
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