午前0時、夜空の下で
日が昇ると同時に色鮮やかに着飾った蝶たちが動き始め、日が沈むとようやく蝶たちは羽を休めるのだ。

そこは気怠く妖しい雰囲気の渦巻いた、歓楽の世界――。

初めこそ戸惑っていた心も、日が沈んで羽を休めようとした蝶たちに迎えられ、ようやく落ち着くことができた。

どこから来たのかすら話せない心を責めることなく、彼女たちは真摯に接してくれたのである。

「仕事柄、人を見る目は鍛えられとるけんねぇ。うちら黎明館の蝶に認められることが、ここで働く最終関門なんよ」

その最終関門をあっさり通過した心は、気のいい旦那に迎えられ、黎明館で働き出したのだ。
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