午前0時、夜空の下で
心は呼び寄せられたかのように鉄の格子へと近づき、思わず息を呑む。

黒く、長い外套を纏った男が、コンクリートの壁に背を預けて座り込んでいる。

近づいて見たその顔は、驚くほど整っている。

黒く艶やかな髪が、男の象牙色の肌を際立たせていた。

無意識に、心は自分の身体を抱き締める。

地下室はひんやりとした冷気で包まれていた。

空気がしっとりと湿気を帯び、牢の存在が寂寥感を与えてくる。

「どうして……」

つい漏れた声は思いがけず大きく響いてしまい、心は慌てて口元を押さえたが、遅かった。

「……誰だ」
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