午前0時、夜空の下で
第7話
――満月の夜。
月を見上げていた男は、ふと背後に目を向けた。
「カザリナ姫は、人間を取り逃がしたご様子。……どうなさいますか」
暗い闇の中、少女は淡々とそう告げる。
その髪は青光りするほどに黒く、瞳は黒銀。
男はクッと口元を歪めると、再び月を見上げる。
「当然だろう?捜し出して、即刻殺せ」
少女は静かに頭を下げると、音も立てずに消えた。
「どうかなさいましたか?」
突然かけられた声に振り向くと、兵士が首を傾げて立っていた。
「あぁ、満月があまりにも見事で」
笑顔でそう言った男に、兵士も微笑む。
「本当に。……ココロ様は今頃、どうなさっているのでしょうか。どうかご無事で、この月を見上げていれば良いのですが」