午前0時、夜空の下で
滑らかな男の手が、心の顔へと伸ばされる。

「面白い。人間にしては良い感性を持っている。……そうか、お前だったのか」

男は心の柔らかな頬を撫でると、するりと項をなぞった。

「震えているな。ああ、魔力にあてられたか。……女、地上では多くの人間が、何者かに殺められているだろう?」

地上を知らないはずの男が、そんなことを言う。

この町で殺人事件が多発するようになったのは、ほんの一月前だ。

男はつい最近、この牢屋に閉じ込められたということだろうか。

男の言葉に動揺した心は、慌てて男を見上げた。

冴え冴えとした漆黒の瞳が細まり、心を見下ろしている。
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