午前0時、夜空の下で
そろそろ、黎明館の面々も起きだす頃だろう。

ミスティアのことも気に掛かる。

心はもう一度だけ水面に目を向けると、振り切るかのように背を向けた。

「え、と……アッシュさん? あの、色々とありがとうございました」

勢いよく頭を下げると、アッシュは目を細めた。

「アッシュで構わない。そなたは我が主の伴侶となるのだろう?……娘、本来この森に、魔族や人間は入れぬ。あまりこの森に近づかぬ方がよかろう」

心は大きく溜息をついて、その言葉に頷いた。

「もう、妃月さまと話すことはできないんですね……」

おそらく妃月は、もう心と話すことを望まないだろう。

強くならなければと、改めて強く感じた。



< 172 / 547 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop