午前0時、夜空の下で
二階へ繋がる階段を上りながら、キシナは小さく溜息をつく。

腕の中には、無傷の少女。

おそらく……否、間違いなく彼女は久遠の森へ入ったのだろう。

それも、中心部である直轄区に。

あそこにはアッシュがいる。

王の目となり、森を守護する孤高の灰狼。

彼は魔王に、昨夜の出来事を報告したに違いない。

心が……粛正されかけたことを。

窓から射し込む光が、だんだんと雲に覆われていく。

心を寝かせ、窓際に立って外を見上げれば、灰色の雲が太陽を飲み込もうとしていた。

粛正とは、厳重に取り締まって不正をなくすことである。

夜族は王に次ぐ血をもつ一族として、黎国を守るため、不正だとみなしたものは徹底的に排除する。



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