午前0時、夜空の下で
心の視界が悪い所為か、黒い何かのもともとの形なのかはわからないが、丸くて輪郭はぼやけている。

泣き声の正体は、その黒い物体だったらしい。

どうしたの?と声を掛けようとして、心は今更だが声が出ないことに気づいた。

辺りはとにかく真っ白で、自分の手足がどこにあるのか、またはどの方角を向いているのかすら、よくわからない。

立っているのかもよくわからない状態で、近づこうにも、どうすればいいのかわからないのだ。

心底困り果てたとき、小さな声が耳に飛び込んできた。

耳を澄ませて、か細い声を聞き取ろうとする。

『……、様……』

様、という敬称に、心は目を瞬かせた。

よくわからない、黒い“何か”。



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