午前0時、夜空の下で
アシャンを押し退けることもなく、ミスティアはただ見つめていた。

そんな姿に怯んだのか、アシャンがそっと脇に寄る。

カルヴァローネ伯爵たちは、依然として楽しげに話を続けていた。

その様子をじっと見つめ、静かに目を閉じたと思ったら、次の瞬間にはにっこりとミスティアが微笑む。

「婚約者かもしれへんね。……貴族に有りがちな」

握られた小さな拳が、小刻みに震えている。

「ダンナ様に申し訳ないわぁ。ココ、知っとる?レインは黎明館で一番の上客やって」

もう来てくれんかもなぁと呟きながら、ミスティアはすたすたと部屋の方へ戻っていく。

「ミスティア、」

心の不安げな声に、ミスティアは答えない。

「もう開店の時間やし、急がんとね」

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