午前0時、夜空の下で
漆黒の瞳を閉じ密かに言葉を紡げば、次の瞬間には門前に少女を抱えた男の姿があった。

外は雷が鳴り喚き、雨は激しく地面にぶつかっている。

しかし、豪雨が男と少女を濡らすことはなかった。

その身に触れる寸前に、見えない膜のようなもので弾かれているのだ。

「お迎えに参りました、王……我らが、主よ」

恭しい声に、男が漆黒の瞳を細める。

彼の周りには、人間の形をした黒い布に身を包んだ者たちが集まり、深々と頭を下げていた。

「久しいな」

男の声に彼らは弾かれたかのように反応し、一様に感極まってその身を震わせる。

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