午前0時、夜空の下で
「婚約者だろうが何だろうが、アタシは自分の気持ちに嘘なんかつきたくない。諦めるのは、想いを伝えてからでもいいやん?」

振り向いたミスティアの表情は、別人のように堂々としていた。

涙の跡が綺麗に消され、麗しい蝶が佇んでいた。

「もし断られたら、二度と店に来るなって追い出してやるけぇ」

そう言って、ふふっと意地悪そうに笑う。

「怖く、ないの……?」

カザリナの存在を思い出し、心の表情が苦しげに歪んだ。

妃月は何もなかったと言っていたが、心はあの日の出来事を、忘れられそうにない。

明確な言葉を貰えない不安や、自信が持てないための劣等感。

逢えないと、すぐ不安に押し潰されそうになった。

「断られたら、今までみたいに逢えなくなるんだよ? そうなるくらいなら、いっそ今のままがいいって思わない……?」

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