午前0時、夜空の下で
第10話
「今宵、琅に向かうらしい」
月がさん然と煌めく深夜。
彼らは月明かりすら届かぬ暗闇で、ひっそりと言葉を交わしていた。
「琅に? ……これは思ってもみない好機だな。琅ならば、黎に比べて陛下による魔力の支配が弱い」
青光りするほどに黒い彼らの髪は闇夜に溶け込み、ただ黒銀の瞳だけが夜空に浮かぶ星のごとく輝いている。
「では、我らも琅に――……姫?」
彼らはふと、長である少女に目を向けた。
少女はと言うと、なにやら考え込んだ様子で虚空を見つめている。
「あの、血の香りは……」
「姫? 何か言ったか?」
少女の微かな声はその耳に届かなかったようで、彼らは一様に首を傾げた。