午前0時、夜空の下で
「ど、れい……?」

まだ人間界にいた頃、世界史の授業で耳にしたその単語。

今でも発展途上国では、奴隷制度が根強く残っているらしい。

――まさか、この世界にも存在するなんて。

「可哀相なモンだよ。いいように使われて、病気になったり、使えなくなったら始末される。アンタ、奴隷を知らないなんて随分幸せな環境で生きてきたみたいだけど、この国で隙を見せるんじゃないよ。知らないうちに薬漬けにされて、売られることなんかザラだからね」

恐ろしい表情で忠告され、心は戦慄した。

黎では分からなかった、外の世界。

……否、人間界にいても、日本にいる限りこんな世界に直面することはなかっただろう。

震える足で、心は一つの檻へと近づいた。

ジャリ、と小石を踏みしめた音に、檻の中で蹲っていた者が、むくりと顔を上げる。

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