午前0時、夜空の下で
思わず、涙が零れた。

心より若干幼く見える少女が、驚いたように目を見開く。

細い手足だ。

幸せな環境でふくよかに育ってきた自分を、少女が知ったらどう思うだろう。

「な、泣かないで……」

戸惑いを露わにした表情のまま、優しく宥めるような声が届いて、ますます涙が溢れた。

奴隷制度なんて間違っている。

頭の中は痛いほどその言葉を繰り返すが、だからと言って心に何ができる?

無力な人間である心は、この世界では誰よりもちっぽけな存在で。

せめて、妃月とともにいた頃なら、どうにかできたかもしれない。

「ねぇ、一人? もしかして他の国から来た人? だったら、ここにいちゃだめ。売人に捕まったら、あたしみたいに奴隷にされるよ。早く逃げて」

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