午前0時、夜空の下で
切々と訴えられたそれに、心は駄々をこねるかのように首を振った。

「こんなの見て、放っていけるわけないでしょ!? 何もできないけど……でもどう考えたっておかしい! 黎には奴隷なんていなかった!!」

――黎に奴隷制度がないってことは、妃月さまがそれを良しとしていないからでしょう!?

思いを言葉にしようとした心は、グッと腕を捕まれ口を噤む。

「よぉ嬢ちゃん、一人か? ……フン、顔はいまいちだが、肉はついてんな。儲けモンだ、こりゃあ良い値がつくかもしんねぇ」

浅黒い男が、心の腕をがっしりと掴んだまま、ニタリと下卑た笑みを浮かべた。

檻の中の少女が真っ青になって震え上がるのとは対照的に、心の顔は怒りと羞恥で真っ赤に染まる。

に、肉っ……!?

プツリ、と理性の切れる音。

スッと目を半眼にした心は、次の瞬間、男のすねを渾身の力で蹴り上げた。

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