午前0時、夜空の下で



ふわり、と体が揺れる。

身に覚えのある感覚に、心はぼんやりと意識を浮上させた。

気づけばまた、あの真っ白な世界が心を包んでいる。

『……、……ル様』

泣いてはいないようだが、その声はひどくか細い。

おそらくその声を発したのは、黒い“何か”。

意識を集中させていくと、黒い“何か”が瞳に映った。

近づくことも声を掛けることもできず、ただただそれを見つめ続ける。

ふと、黒い“何か”が黙り込んだ。

『やはり、そこに……』

心は息を呑む。

初めて、黒い“何か”と目が合った気がした。

ゆらり、と黒い“何か”が近づいてくる。

『……ル、様――!!』



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