午前0時、夜空の下で
「私ね? もっといろんなことを知りたいの。黎にいた頃は、奴隷制度のことなんて知らなかった。こうして動いているからこそ、私の世界はどんどん広がっていくんだと思う」

嬉しくて仕方がないと言わんばかりの笑顔に、キシナは目を細める。

脆弱な人間の小娘。

魔王の妃となるなど論外だと思っていたが、実際の彼女はどうだろう。

力のある者に媚びることもなく、着実に自身の力で頼ることのできる魔力を増やしている。

彼女は気づいているだろうか。

王と水面越しに言葉を交わして以来、陛下を想うが故の涙を零していないことに。

弱みを晒さないようになってきていることに。

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