午前0時、夜空の下で
第12話
――人間界――
「昴、奈美さんの具合はどうだ?」
耳が痛いほどに静まり返ったリビングで、宗一郎は目の前の息子に問い掛けた。
「心の部屋で、ずっと泣いてるよ。……なぁ、父さん。あの子に何かあったら、俺はどうなるんだろう……」
俯き、顔を手で支える昴の肩は、小刻みに震えている。
「昴」
「奈美は自分のことを責め続けてるんだ。あの日、心を行かせてしまったのは自分の所為だって……。俺、もうどうすればいいかわからないんだよ」
宗一郎はカーペットが少しずつ湿っていくのを見つめ、グッと眉根を寄せた。
彼の二人目の孫が消えてから、滝川家は火が消えたかのような静けさだ。
心が行方不明になって以来、明るい人柄だった母親の奈美は、毎日を泣き暮らしている。
心が消えた日を境に、毎日のように起こっていた無差別殺人事件がぱったり止まってしまったことも、彼女を苦しめた。
犯人が一向に捕まらず、事件はすでに迷宮入りだと囁かれている。
「しっかりしろ。お前の守るべき家族は奈美さんだけじゃないだろう。長女の雫、長男の翔太だっているんだぞ」