午前0時、夜空の下で
記憶の中の両親は、息子の前でも堂々と愛を囁き合っていたのだ。

お互いを理解し合い、想い合い……確かに、常々佐伯が傍にいた気もするが。

だが佐伯は、年甲斐もなく恋愛し続け、そんな二人に付き合っていられないと家出した昴を、いつも笑って洋館に迎え入れてくれたのだ。

昴にとっては家族のような人である。

「いつのまにか、あの洋館があの場所に建っていて、気づけば二人がそこに住んでいた。二人の両親のことも、幼い頃のことも……誕生日のような些細なことすら、知らんままだ」

宗一郎の言葉に、昴は目を丸くした。

「母さんが生きていた頃に、そういう話をしなかったのか?」

「……当時はなぜか、知らなくても気にならなかったんだ。今思えば、それが不思議で仕方ないが……」

独り言のように呟き、宗一郎は過去へと思いを馳せたのだった。







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