午前0時、夜空の下で
――魔界――
それは、一瞬だった。
「ノーラ!」
「ミスティア!!」
守護人たちの鋭い声が、二人の意識を引き付けると同時に、強く手を引かれ建物の影に連れ込まれた。
「ウィーザーだ!」
「逃げろ!! 殺される!!」
ノーラとミスティアをそれぞれの守護人がきつく抱き込み、視界を塞いだ。
琅の国情を正確に把握していたノーラは、取り乱しはしないものの、青ざめて肩を震わせている。
一方、知識としてはウィーザーのことを知っていたが、黎から出たことのなかったミスティアは、初めて耳にする反乱の現状に、ひどく動揺していた。
手足をばたつかせ、拘束から逃げようとする。
「ミスティア、落ち着け。ウィーザーは一般市民に手を出さないが、反乱に巻き込まれると軽傷では済まないぞ」