午前0時、夜空の下で
しばらく二人で回廊を歩き続けていると、やがて視線の先に一つの扉が見えた。

その扉がゆっくりと開き、中から俯きがちに一人の女性が現れる。

「あっ、クルシェナさん! 今、ヴェルディ様とお話できます?」

クルシェナと呼ばれた女性は、ノーラと目が合った瞬間、ふわりと顔を綻ばせた。

「ノーラじゃないの! 久しぶりねぇ。琅に帰ってきてたのね」

そう言って嬉しそうな笑みを浮かべていたが、ふとその顔を曇らせる。

「ヴェルディ様は……ちょっと難しいと思うわ。今は寝室に閉じこもっているのよ」

「……いつも寝室にいましたよね? あ、閉じこもるってことはないか」

不安げなクルシェナとは対照的なノーラの軽い返答に、ミスティアが目を丸くする。
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