午前0時、夜空の下で
第13話



深夜の暗闇に潜み、少女は微動だにせず一点を見つめていた。

魔王の機嫌が悪いのか、月はとっぷりと雲に飲み込まれてしまっている。

黒髪をしどけなく垂らした少女の周りには、彼女を護るようにいくつもの影が立ちはだかっていた。

「……姫、」

そのうちの一人がそっと声を掛ければ、少女はちらとも視線を揺らすことなく口を開いた。

「あの方だ。あの方こそ、我らの真の主」

バッサリと言い切った少女の言葉に、彼らは息を呑んで驚きを顕わにする。

「では、我らは……」

「あの方に従いお守りすることこそ、我が一族の役目。城へはもう行かぬ」

小さく口元で弧を描くと、闇の中へと姿を消した。

彼らは少女が見つめていた方向に一瞬だけ視線を向けると、同じように真夜中の暗闇へと溶け込んでしまった。




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