午前0時、夜空の下で
このままではいけない。

こんな瞳を増やしていけば、いつか取り返しのつかないことになると、その唇を噛み締めた。

「おい! ココ、ミルフィーユ!!」

ウィーザーのうちの一人が掛けてきた声に、怠けていたことを咎められたのだと慌てて姿勢を正す。

しかし彼の後ろから凛とした表情が魅力的な美女が現れ、二人同時に首を傾げた。

男が美女に何かを話し掛けると、美女はその場で立ち止まり、男はそのまま心たちの方へと歩いてきた。

「あれ、誰なの? ウィーザーにあんな魔族いなかったよね?」

「あぁ。実は彼女、街で絡まれているのを偶然助けたんだが――……どうやらワケアリみたいでな。帰る家も頼れる魔族もいないって言うんで、連れて来たんだ。おそらく、どこかの貴族の坊ちゃんにいいように利用されて捨てられたか、不義の子として生まれちまったか……。あの外見だからな。とりあえず黎明館にいたココの方が、女の扱いもわかってるし、何かと話が合うだろうから、面倒見てやってくれ」

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