午前0時、夜空の下で
言うだけ言った彼は、忙しいと言わんばかりにさっさと立ち去ってしまった。

残された美女は、心と目が合うと華やかな笑みを浮かべた。

見れば見るほど綺麗な人である。

ミスティアとは違って、成熟した美しさを醸し出していた。

紺色の髪が、魔力の明かりによって照らし出されている。

おそらく髪の色が黒に近い色であることから、貴族の血を引いていると考えたのだろう。

貴族の中にも明るい髪の魔族は多く存在するが、平民の中で暗い髪をもつ魔族はめったにいない。

だからこそ心も、ミスティアたちと逸れてしまった今でさえ、キシナの協力を求めて目も髪も色を変えているのだ。

ふと、心は瞳を瞬かせた。

なぜか目の前の美女に見覚えがあるような気がしてならない。

――以前どこかで会った……?

< 311 / 547 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop