午前0時、夜空の下で
第14話
木々がさざめく久遠の森で、灰狼は水に浮かぶ月を静かに見つめていた。
周りは相変わらず鬱蒼とした木に囲まれ、先の見えない闇が広がっている。
神水と呼ばれるその水には、下弦の月が煌々と輝いていた。
やがて、水の上に波紋が広がり始め、月の形がぐにゃりと歪む。
銀狼はピクリと耳を動かすと、スッと瞳を細めた。
「……あっしゅー? え、これでいいの? やだちょっと顔見せてー!」
暗い森の中に、朗らかな声が響き渡る。
相変わらず元気そうだと、アッシュは青灰色の瞳を和らげた。
神水を覗き込めば、水面に映っていた美女が華やかな笑みを浮かべる。
「やーんっ! 相変わらず凛々しいんだからぁ!! 浮気なんてしてないでしょうね!?」