午前0時、夜空の下で
話しながら心の髪を梳るキシナの指は細い。

心も薄々感じていたが、キシナが女性であるとはっきりわかったのは抱き上げられたときだった。

男らしい淡白な言動だが、女性的な体型ばかりは隠せない。

ふと視線を移すと、窓に付けられた遮光布の隙間から、真っ直ぐに差し込む眩い光が目に入る。

もうすっかり魔族たちの眠りに就く時間だ。

そろそろ寝ようと立ち上がったところで、不意にキシナが動きを止めた。

「……誰か来る」

「こんな時間に?」

魔界での早朝は、人間界では真夜中に当たるのだ。

ウィーザーの溜まり場ならまだしも、城でこのような非常識な時間に訪れる者がいるのだろうか。

不安げな表情を浮かべて心がキシナを見上げると、彼女は訪問者の気配から何かを感じ取ったのか、案じる必要はない、と小さく囁いた。

それに頷くと、扉の向こうに控えた兵士から戸惑い気味に来客を告げられ、心は瞳を瞬かせた。

「ヴェルディ様、ジェイ皇子がお見えです」

――ジェイ皇子?

大広間で目にした姿を思い出し、どこか落ち着かない気持ちになる。
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