午前0時、夜空の下で
「お前……もしかして人間界か?」

キシナの言葉に心は息を呑み、ジェイは瞳を細める。

「ああ。陛下の魔力に気づいて人間界に向かい、そこでココロ様に会ったんだ」

「なるほどな。ココ、ジェイは私と同じく黎で軍隊に所属してる。黒牙軍……陛下直属の精鋭軍だ。人間界にいち早く向かったのも黒牙軍だった」

キシナが心に向かって話すと、彼女はキョトンとした表情で見返してくる。

「ココ?」

何の反応も返さない心が予想外だったのか、キシナが不審げに声を上げた。

「……うん」

心は微かに瞳を伏せしばらく黙り込んでいたが、考えを振り切るように首を振ると、笑みを浮かべてジェイを見上げる。

今は自分の考えに捕われている場合ではないのだからと、笑みを浮かべて口を開く。

「黒牙軍って……歴代魔王が所有するという、あの? 皇子さまなのに軍に入ってるんですか?」

黒牙軍のことは、以前黎にいたころクロスリードから聞いていた。

魔王直属の軍隊で、その存在は極秘とされている。

妃月の片腕であるクロスリードやアルジェンたちですら、存在自体は知っているもののその面子は知らない様子だった。
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