午前0時、夜空の下で
「このような時間に伺ったこちらが非常識ですから。……実はココロ様にお願いがあって参りました。もしよろしければ、ココロ様が黎に向かう際にご一緒させていただいてもよろしいでしょうか」

心は少しだけ目を見開いたが、キシナはジェイの言葉を予想していたのか特に驚いた様子もなく、いいんじゃないか?と心に問い返した。

「私は構いませんが……ジェイ皇子が琅を離れてもいいんですか?」

一国の皇子さまなのに、と瞳を揺らす心に、ジェイはしっかり頷く。

「黒牙軍に所属している者の第一優先事項は黎の王族に関わるすべてですので、問題ありません」

「じゃあ……よろしくお願いします」

心が口元を緩めると、ジェイは深く頭を下げる。

静かに退室しようとした直前、心はジェイを呼び止めた。

「あの! ……奴隷制度は、本当になくなると思いますか」

躊躇いがちに問われたその意味を、ジェイは正しく受け取った。

「制度は廃止されます。ですが差別はすぐには消えないでしょう」
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