午前0時、夜空の下で
第16話
――天界――
緋色柱の神殿を頂く天上の世界で、彼女はじっとあるものを見つめていた。
全身に白を纏った彼女は白雪のような肌をもち、その長い髪は白金であった。
物憂い溜息を零せば、艶やかな白金の髪が肩から滑り落ちる。
「……妾には、もうどうすることもできぬ」
そっと呟かれたそれは、誰の耳にも入ることなく消えてゆく。
屈んでいた身体を起こせば、緩く結ばれた白金の髪が揺れ、絹の衣がささやかな音を立てた。
染みひとつない白い手を動かし、彼女は肌身離さず身につけていた朱い結い紐を手に取った。
見つめていたもの――水鏡に映る光景から目を逸らすと、手の内にある結い紐をそっと握り締める。
そして哀しげに、呟いた。
「かのお方のように、あれもまた禁忌の名とされるのか。……十六夜姫よ、そなたは」
――幸せじゃったか?