午前0時、夜空の下で
「どうしても黎に行かんといけんっちゅうこともわかったけど。……わかったけど! ぜーんぶあの女の思惑通りになったみたいで悔しいー!!」

天使のような愛くるしい顔を怒りに染め、ミスティアはバシバシと近くにあった机を叩いた。

「ほんっとに馬が合わないみたいだね……」

ジュリアの方は大して気にしていないようだが、ミスティアはレインとの一件があったせいか、とにかくジュリアのことを毛嫌いしている。

基本的に人当たりのいいミスティアには珍しいことだ。

「とにかく、私のことは置いといて、」

「置けるか! アンタ自分の状況わかっとると!?」

ひとまず落ち着かせようとすれば噛みつかんばかりの勢いで反撃され、心は思わず言葉に詰まる。

「……まあ、私が人間だって気づかれないうちに黎に戻らないといけないってことは――」

「違う!魔王陛下の寵姫ってことや!!」

「別に寵姫ってわけじゃ……」

黎での日々を思い出し曖昧に笑った心に、ミスティアは厳しい表情を向けた。
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