午前0時、夜空の下で
「アンタは魔王ってヤツをわかってない」

「……」

「いいか? ココ――いや、ココロ。この世界にはな、今に至るまでに王妃はたった一人しかおらんのや」

ミスティアは厳しい表情のまま心を見つめると、小さくため息を零した。

まるで叱られているような気持ちになり、心はそっとミスティアから目を逸らす。

視線の先にあるのは、心に与えられた豪華な部屋だ。

寒気がするほど広いこの部屋は、琅の第五皇女――ヴェルディの私室である。

彼女の身代わりとして黎に向かうことが決まると、すぐにこの部屋へ通されたのだ。

「その王妃こそ、かの有名なリーヴル様で……」

相変わらず厳しい表情で語るミスティアに、心はふと視線を戻す。

「……リーヴル様?」

心が首を傾げると、ミスティアもあれ、と首を傾げた。

「アタシ、話さんかった? リーヴル様のこと」

「ううん、教えてもらった……初代魔王様の王妃になった人だよね?」
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