午前0時、夜空の下で
「一度に移動できる人数は限られておりますので、何度かに分けて転移を行います。まず国事館に護衛の者たちを派遣し、あちらに準備が整い次第皇女殿下に転移していただきます。皇女殿下の転移に際しては、私とジェイ皇子、それからキシナ殿がお供いたします」
クウェンはつと周りを見渡し、人払いされていることを確認すると声をひそめた。
「そして、転移が行われると同時に、ヴェルディ様方も城をお立ちになる予定です。国境付近までお連れし、国外追放の処分を実行いたします」
ヴェルディは現在、ウィーザー一派とともに囚人塔に幽閉されていた。
心がヴェルディの身代わりとなる以上、本人が城で過ごすことは許されず、またウィーザーたちを庇ったことで囚人塔行きを余儀なくされた。
囚人塔は国内の重罪人が集う場所であり、お世辞にも過ごしやすいとは言えない環境である。
それでも囚人塔行きを下したのはレインであり、ヴェルディは従順にそれを受け入れた。
例え皇族であろうと、厳しく処罰しなければ事情を知る貴族たちに軽んじられるからだ。