午前0時、夜空の下で
それでは参りましょう、と促すクウェンに従いながら、心は眉根を寄せる。

謁見時に顔を見せれば、妃月がすぐにでも気づいてくれるだろうと安易に考えていたのだ。

しかし言われてみれば、確かに選ばれし姫が身代わりであることは琅にとって都合が悪いだろう。

黎王を軽んじた、蔑ろにしたなどの非難は避けられない。

「……キシナ」

誰もいない空間に声を掛ければ、即座にキシナが姿を現した。

「書面ではあるが、陛下にはすでにお前がヴェルディ様の身代わりとして入城することを報告してある。問題はないだろう。ただ……正式な謁見の前に、陛下から使者が送られてくるものと思っていたが……」

キシナが首を傾げた途端、空が眩い光を放ったかと思うと、物凄い轟音が響き渡った。

雷だ。

バケツをひっくり返したかのような激しい雨も降り始める。
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