午前0時、夜空の下で
この大広間で、心はカザリナと出会い、そして城から追い出されたのだ。

静かに息を吸って、心は再び歩き出す。

そして。



「……そなたが、琅の選ばれし姫君か」

焦がれ続けた声が、心の胸を締めつけた。

クウェンの言葉も、叩き込まれた礼儀作法も、すべて消えた。

狂おしさにヴェールをかなぐり捨て、ひたすら求めた存在に目を向ける。

現れた心の相貌に、大広間中がどよめいた。

妃月の傍らに控えていたクロスリードとアルジェンが、静かに息を呑む。

彼らにとっても集まっていた黎の中枢を担う官吏たちにとっても、忘れられなかった類稀なる少女が立っていたのだ。

大広間に他国の者がいないため、問題はそうそう起きないだろうが、それでも危険なその行為に官吏たちは眉をひそめた。
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