午前0時、夜空の下で
そんな彼らに一瞬たりとも視線を向けず、心は一途に玉座の主を見つめ続ける。

漆黒の髪は、相も変わらず艶やかで。

漆黒の瞳は、静かに凪いでいて。

――漆黒の魔王は、神々しいほどの美しさを纏って君臨していた。

「……さ、ま……」

心は己を抱きしめたまま、魔王を見つめ続けた。

瞳から幾筋もの涙が溢れ出す。

「……づき、さま」

静まり返った大広間に、涙に濡れた声が響き渡る。

「……っ妃月さま!!」

そして大きく響いたその声音に、大広間中が凍りついた。

無表情で心に目を向けていた妃月の表情が変わる。


「――誰の許しを得て、それを口にした」

ひどく、冷徹な――身体を芯から凍らせるかのような絶対零度の声。

涙に濡れていた心の瞳が見開かれる。
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