午前0時、夜空の下で
第3話
月満ちる、夜。
一日が終わり、そして新たな一日が始まる。
「……女、ですって?」
毒々しく、真っ赤に色付いた口唇を歪めて、彼女は水面に映っている少女を睨んだ。
ビクリと、少女の肩が跳ねる。
「本当に?本当にあの陛下が、人間の女をお側においていらっしゃるの?」
はたり、はたりと扇を揺らして、彼女は顔を顰める。
少女は主を見上げ、己の知るすべてを伝えた。
「……そう」
彼女は目を閉じ、心酔する男を脳裏に描く。
艶やかな黒い髪。
滑らかな象牙色の肌。
絶世の美貌をもつ魔界の主が、彼女の心を絡めとり夢中にさせてしまうのに、たいして時間はかからなかった。