午前0時、夜空の下で
実際、噂は消えかけていた。

……クロスリードの言葉がなければ。

「どうしてなのですか。陛下の記憶が薄れ始めたかと思うと、あなたはすぐにココロ様の痕跡を消しました。
さらにはカザリナ様を召し上げるよう、陛下に進言するだなんて……。
なぜ、ココロ様ではいけないのですか」

シリアの訴えを、クロスリードは嘲笑う。

瞳には冴え冴えとした光を宿し、笑わない目でシリアを鋭く見据えた。

「どうしてか? 当然でしょう。私はあの女を認めたことなど一度もない。
あれのどこが陛下に相応しい? 身の程知らずも甚だしいというのに」

「一体何をっ……!!」

反論しようと口を開けたシリアは、クロスリードが手で強く執務机を打ったことに驚き、その場に立ち竦んだ。
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