午前0時、夜空の下で
シリアはあまりの内容に声も出せず、その場に崩れ落ちた。

震える手で口元を押さえると、恐怖を含んだ眼差しをクロスリードに向けた。

その瞳は、なぜこのような場所に堕天がいるのか、と雄弁に語っている。

「私が恐ろしいですか? 世界を追放されるほどの罪人ですから、この場にいることが信じられないというところでしょうか。
この名の意味を知っているのは陛下だけですから、それも仕方ないことですが。
……私はね、陛下に拾われたのですよ」

語るクロスリードの瞳は静かだ。

シリアも動揺したものの、生来の冷静な気性が幸いしてすぐに落ち着きを取り戻す。

「かつて、ある事件を起こし、天界を追放されました。親にすら見捨てられた私は堕天として生きるにはまだ幼く、すぐに死ぬだろうと言われましたよ。
いいえ、天界の者たちには死んだと思われているでしょう。
そんな私を救ってくださったのが、陛下なのです。あの方が即位なさる前のことでした」
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