午前0時、夜空の下で
シリアは初めてクロスリードを知った時のことを思い出す。

クロスリードはその美貌と才能から、羨望の眼差しも嫉妬の殺意も一身に集めていた。

身分のある貴族の出でもないクロスリードを登用したのは、陛下だ。

即位当初から側近として政務に携わり、今では並み居る高官たちを抑えて伸し上がった実力者。

彼の実力を認めた前王時代の宰相は、陛下に申し出てその後見を務めているという。

シリアがクロスリードと出会った時にはすでに、陛下の側近として確固たる地位を築き上げていた。

「私は陛下に王であってほしい。あの方は私のすべてで、私の生きる理由なのです。
あの方がいらっしゃらない世界になど、何の意味もない」

吐き捨てるように言ったクロスリードは、シリアを真っ直ぐ見据えた。



「――だから私は、ココロ様を殺します」
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