午前0時、夜空の下で
シリアも無言でクロスリードの声に頷いた。

黎明館に逃げ込んだり、琅の皇子を味方につけたり、反乱軍に与したりと、彼女の行動は突飛だが、一つ一つが己の幸運に結びついている。

努力では決して手に入れることのできないものだ。

「それでも、私は彼女を認めない。真の女王など、決して認めはしない」

それはまるで悲鳴のようだった。

身を引き裂かれるかのような悲痛な訴えに、シリアは眉根を寄せた。

おそらくクロスリードはもうわかっているのだ。

魔王の身体が毒に犯されてしまった時点で、もう手遅れなのだということを。

天族の血に効く解毒剤はない。

陛下はゆっくりと、御身を毒に蝕まれていく。

「魔王であるべきは、あの方だけだ」

涙色に染まった声が、静かな哀しみを帯びて、消えた。





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