午前0時、夜空の下で
一体どれほど走ってしまったのか、地面に足をとられて倒れ込んだところで、心はようやく顔を上げた。
呼吸が乱れ、ひたすらに動かした足は悲鳴を上げている。
心は自分の姿を見下ろし、埃や泥に塗れた自身を嘲笑った。
黎明館を飛び出す際に聞こえたキシナの声が、ぐらぐらと頭を揺らす。
心配してくれたのだ、彼女は。
そんな彼女の優しさから目を逸らし、ついてくるなと突き放した自分のなんと幼いことだろう。
そして、目の前に生い茂る木々に気づく。
「久遠の森か……」
無意識に黎明館を飛び出してしまったが、再び森の中に逃げ込んでしまったようだ。
その場に座り込んでいると、空から小さな雫が落ちてくる。
鬱蒼と生い茂った森の中は、日が昇ったはずだが暗く淀み、不気味な雰囲気に満ちていた。