午前0時、夜空の下で
「心はどうしてる?」

妃月の問い掛けに、クロスリードはヒクリと口元を引きつらせた。

恐る恐る妃月に目を遣ると、書類片手にこちらを見ている。

その瞳に輝くのは――好奇心。

「それが……ですね。その、……城の者たちの手伝いをなさっています」

恐々と発せられたクロスリードの言葉に、妃月は目を瞬いた。

「先程、護衛をしているアルジェンからきた報告では、回廊で使用人たちを手伝っているとか」

クロスリードが口をつぐむと、恐ろしいほどの沈黙がその場を支配する。

やはり言うべきではなかったか、とクロスリードが後悔し始めたとき、妃月は声を上げて笑いだした。
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