午前0時、夜空の下で
「おお、すまぬ。異界の客人などめったに現れぬゆえ、挨拶を忘れておった。
……天界へよう参られた、異界の娘よ。妾はこの天界を司っておる、皇極じゃ」

「……天王様でいらっしゃいますか?」

遠慮がちに問い掛けられて、皇極は艶やかな笑みとともに頷いた。

「十六夜姫は天界にとっても尊きお方ゆえ、その御魂を受け継ぐそちのことを放ってはおけなかったのじゃ。
魔界に行ってはこうしてゆうるりと話せる機会も少なかろう。妾の話し相手になってはくれぬかえ」

緊張した様子で心が頷くと、皇極は笑みを深めて手を叩いた。

「酒と肴を持って参れ!」

皇極の声掛けに、娘盛り少女たちが笑顔で酒瓶やら料理やらを持ってくる。

色鮮やかな料理の数々に、心は思わず口元を引き攣らせた。

正直に言ってしまえば何かを食べられるような心理状態ではない。

カルマから聞かされた現実に直面し、逃げ出してきたばかりなのだ。
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