午前0時、夜空の下で
静かに語っていた皇極は、悔いるかのように声を震わせた。

天族も魔族も人間も、誰一人として完璧な存在にはなりえないのだ。

感情を持ち、欲が生まれ――過ちを犯す。

かつての天王もまた、過ちを犯してしまった一人。

「……すまぬ。感情が高ぶってしまったようじゃ。話した通り、十六夜姫は不遇の娘であった。
そんな彼女を救ったのが、初代魔王――黎稀王じゃ。かの君は十六夜姫を殊の外愛し、十六夜姫以外の女君が己に近寄ることを許さなかった。
それどころか、魔界で立場の悪い十六夜姫を想い、己の持つ実権を十六夜姫に移行しようなさったのじゃ」

皇極が語った内容に、心も深く頷く。

黎稀の行動があったからこそ、現在の魔界では婚姻を期に女性に権力が移行するという、妙な体制が成り立っているのだ。

国によって強制力は異なるが、魔王を頂く黎国では権力の移行は必ず行われる。
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