午前0時、夜空の下で
「十六夜姫は天族であった上、政務のことなど何も知らぬ。
あまりに無知で味方も少ないゆえに、黎稀王を直接諌めようとする臣下もおった。
魔界の八大国の初代王たちなど、その筆頭じゃ。彼らは国王であると同時に、黎稀王の忠臣であったからな。
それでも黎稀王は、天族である十六夜姫にすべての実権を渡したのじゃ」

「実権を渡したということは……まさか十六夜さまが黎国の王になられた?」

「黎稀王はそうなることを望んでいらっしゃったのだろう。だがそう旨くいく話ではない。
まず魔王になるには、それ相応の魔力が必要じゃ。それこそ黎稀王ほどの魔力がなければ、魔界を統べることなど不可能であろう。
黎稀王は力で魔界を制したのだから、次期魔王に求められるのも魔力の素質であった。
――魔力を持たない十六夜姫が魔王として即位することは不可能ゆえ、日々の政務は十六夜姫が行っても、王として魔界を支配しておったのは黎稀王じゃ。
実質は二人王がいたようなものであろう」
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